先日、建物関係の良質な展覧会を多く開催していたLIXILギャラリーさんが今秋で閉廊するとの情報を目にした。。非常に残念であり悲しい。
私は数年前に存在を知り、その内容の面白さや観覧無料・撮影基本OKな太っ腹な運営姿勢が好きで毎回新しい展覧会が開催されると必ず行くようにしていた。
色々とご事情もあると思うが、一先ず「今までありがとうございました」と言わせていただきたい。
私が存在を知ってからも数々の展覧会が開催されてきたが、今思い出したものを挙げると次のようなものになる。
実は郷里の広島県福山市出身の武田五一。そんな武田五一が京都大学建築学部や京都工芸繊維大学に残していた建築標本の数々を展示した展覧会だった。
展示の中でも記憶に残っているのはタイルや取っ手などの金具、ガラスブロックなどのサンプルだ。
これまで建築素材についてあまり気にも掛けていなかったが、この展示からそれらにも興味を持ち出し古い建築素材の資料を調査したりもした。
建築素材と言ってもドアの取っ手、金属天井、リノリウム、コンクリート瓦、煉瓦。。。などなど
展覧会の図録中にあったタイルに見覚えがあり、過去撮影した写真を見返してみると先斗町歌舞練場にあるタイルと同デザインということがわかりテンションが上がった。
また、国立国会図書館のデジタルコレクションを調べると、大正時代の建築資材カタログがあり、既にこの時代には、高価ではあるが大体の資材が存在していたのではないか、と思うほどの豊富な商品が紹介されていた。
営繕
近代建築を好みにしていると、よくこの言葉を目にする。ただし「〇〇市営繕課設計」とかの形でだ。
建築課でなく営繕課
営繕の意味をWikipediaから引用すると次のような意味らしい。
営繕は、建築物の「営造」と「修繕」をまとめて指す語。具体的には、建築物の新築、増築、修繕および模様替などを意味する
企業や役所などの組織において、新築工事、増改築工事、模様替え、修繕工事などを計画、発注、監理する仕事や業務を一括して総称する場合に用いられている。
この展覧会では箱根で1878年(明治11年)創業に創業し現在も営業している富士屋ホテルの営繕さんにスポットがあてられた展覧会だ。
どうしても建物ばかりに目がいきがちだが、当然それを管理する人間がいてはじめて長い年月、存在することができるのだろう。それに気付かさせてくれた良い展覧会であった。
三代目社長の顔を模して作られたと言われているメインダイニングの柱もクラシックホテルとしておもしろい。
"江川式"擬洋風建築 - 江川三郎八がつくった岡山・福島の風景
2019年のGWに岡山の近代建築めぐりをしていた。その中で総社市まちかど郷土館のスタッフの方とお話する機会があった。
そこで「この建物もそうですが岡山には江川三郎八の設計した建物がいっぱいありますよ」という言葉を聞いた。
興味を持ち調べてみると、その日めぐっていた岡山の多くの近代建築が江川三郎八という人が設計しているということがわかった。
そのようなことがあり江川三郎八について調べ続けていたのだが、タイミングよくLIXILギャラリーにてこの展覧会が開催され喜んて訪れた。
展示では岡山以外に福島にも江川建築が残っていることを多くの写真や資料で教えてくれた。岡山のものは粗方訪れていたが福島のものは知らないものばかりで、何れ訪れてみたいと思った。
岡山の江川三郎八建築については以前の記事にて紹介。
→ 岡山の江川三郎八建築を巡る
LIXILギャラリーの展覧会は、毎回その展示に関する図録を出版しており、今ではその数、数十冊にのぼる。つまりそれだけ展覧会が行われたのだろうし、その年月は約40年にも及ぶ。ギャラリー閉廊より後になるが、このLIXIL出版も終了が決まっているとのことだ。
以前ギャラリーでいただいた図書目録を見てみると、私が行けなかった過去の企画も興味深いものが多かったようだ。
行けなかった展覧会であっても、これらの図録を見ると、なかなかに詳しく内容を知ることができるため貴重な資料である。
私も、これらの図録のうち何冊かを本屋や古本市、ネット、通販で手に入れており、あらためて数えてみると12冊ほどであった。
図録はインスタを先取りしたような正方形で、すべてを自室の床に並べてみたら綺麗に写真におさまった。
写真をみてみると一目瞭然だが、所有している図録はタイル関係が多く、自分の趣味趣向を再認識できるようでおもしろい。
それぞれ良図録・ハズレなしで、みなさんにも是非ご覧になっていただきたく、今後、数回にわけてこれらの所有図録を出版年月順に紹介していきたいと思う。
ライトの帝国ホテルでも用いられたテラコッタ。大正末期から昭和戦前までの約20年、日本のビルを多く飾ったこの建築装飾焼物の現存例を探査、再評価する。
→2020年5月27日 【書評】建築のテラコッタ
古来、わが国にもタイルはあった。名を「敷瓦」という。白鳳の昔から幕末の「本業瓦」を経て、大正末期に外来のタイルと合流するまでをはじめて系譜づける。
→近日予定【書評】
モリスのアーツ・アンド・クラフツ運動からアール・ヌーヴォー期に至るまでのイギリスに開花した美しい装飾タイル。明治の洋館も飾ったその数々を紹介。
→近日予定【書評】
瓦博士の渡来以来、わが国の木造建築を覆い、美しい甍(いらか)の波を構成してきたこのユニット建材の歴史を顧みつつ、地場産業としての現況を取材し、その活性化を考える。
→近日予定【書評】
中国や日本の影響を受けて17〜18世紀に発達したオランダのタイルは、現地の生活や風物が具象的に描かれているのが特徴。その多様な展開を楽しく紹介する。
→近日予定【書評】
19世紀末にフランスで発行されたれんが建築のスタイルブックを復刻。その石版図を書くに、構造材のみならず仕上げ材としても活用されてきた、れんがの多様な側面に光をあてる。
→近日予定【書評】
イスラムの影響を受けて16〜17世紀に最盛期を迎えたスペインのタイルは、アルハンブラ宮殿を彩り、ガウディの建築も飾った。マジョリカ・タイルの全容。
→近日予定【書評】
光をとり入れる機能だけでなく、ガラスは建築にどのような役割を果たしてきたか。日本近代およびヨーロッパの中世から現代を一望し、ガラスと建築の関わりを考える。
→近日予定【書評】
12世紀に黄金期を迎えたイスラームの文化は、灼熱の砂漠の地で色鮮やかな釉薬と類稀な造形を生み出した。モスクを覆った美と技の粋に見る装飾タイルの原点。
→近日予定【書評】
錦絵のおもちゃ絵の一種・立版古(たてばんこ)は、歌舞伎の名場面や社寺名勝、風俗を切り抜き、組み上げて、迫力の縮小世界をつくり出す。建築的視点による江戸文化考。
→近日予定【書評】
基壇・床・壁・塀などに用いられ、古来より建築にさまざまな表情を与えてきた中国のタイル=塼(せん)。歴史、工法、文様の意味など、多角的に塼を語る。
→近日予定【書評】
太古から住まいや道具づくりに利用されてきた土。土の多様な特性と美しさに、「焼いた土」「焼かない土」「土壌見本」の3方向から迫り、知らぜざる神秘的な魅力を捉える。
→近日予定【書評】
以上
2021年9月25日
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