【近代建築の楽しみ方】ガラス編

【近代建築の楽しみ方】ガラス編
公開:2020/06/27 更新:2020/11/14

近代建築から使われ出した建築材はなんだろうか。

タイル、煉瓦、モルタル、人造石なんかを思い浮かべるが、もう一つ「ガラス」がそれにあたるのではないか。

恐らく近代以降に建築に取り入れられたものであると考えられるし、実際そうなのだろう。

一般的に建築材としてのガラスとなると、窓ガラスが一番に最初に頭に浮かぶのだが、実はそれだけではない。

他にも色々な使われ方があるのだが。。

近代建築の楽しみ方シリーズ。前回は「煉瓦編」お送りしたが、

今回は「ガラス」についてお話ししたいと思う。



他の【近代建築の楽しみ方】シリーズは↓↓↓
【近代建築の楽しみ方】煉瓦編
【近代建築の楽しみ方】タイル編
【近代建築の楽しみ方】金属天井編


ガラスの日本での普及

ガラス関係の文献をあたるとコップや器などの工芸品のガラス(ぎやまん)は戦国時代に西洋人から日本にもたらされ江戸時代には日本でも盛ん作られていたようである。

一方、建築用のガラス(板ガラス、ステンドグラスなど)は幕末に外国から手吹き板ガラスが輸入され、明治時代に本格的に普及しだしたようである。

それは近代建築だけでなく和風建築でもそうであり、かなりのパラダイムシフトが起こったものと考えられる。

従来日本では光を室内にとり入れる方法として和紙(障子など)が使われていた。和紙は和紙なりに利点があり現在でもつかわれていることからも優れた建築材だ。

しかしガラスは和紙にない下記のような強みがある。

  • 壊れにくい(和紙より)
  • 燃えにくい
  • 水に溶けない
  • 透明感
  • 西洋文化を取り入れてるという最先端感がある

和紙が建築材で使われる一例として障子があるが、基本的に部屋の中で使うものであり、例えば雨や雪の際にその侵入を防ぐのは障子ではなくて雨戸になる。

当然雨戸は透明ではなく光を通さないため部屋の中は暗くなる。

しかしガラスは光も通すし雨戸代わりにもなる。

これがガラスが建築に使われだした一番の理由ではないだろうか。

色々な使われ方

建築用ガラス(内装含む)に限って取り上げるが、実は窓ガラスだけでなく色々な箇所にガラスは取り入れられている。私なりに分類してみたのでご紹介したい。

板ガラス

一般的に思い浮かぶ窓に使用される板ガラス。

昔は手吹きによる手作業で作られていたのと、運搬時に割れやすいことから大変高価で、手作業ゆえ品質にばらつきもあった。

高橋是清邸
高橋是清邸

旧ハンター邸
旧ハンター邸

旧帝国ホテル:ライト館
旧帝国ホテル:ライト館

今でも近代建築に残る板ガラスをみると、波打っていたり、歪んでいたり、気泡が入ったりしていることがあるが、それが古さの判断基準にもなる。

旧丸山商店
旧丸山商店

また、表面に凹凸がある型板ガラスや、白く濁ったような曇りガラス、結晶のような模様がつく結霜ガラスなど、透明なガラスだからこその「光は通すが外部から見られやすい」点に対処し、目隠し効果を高めたものもある。

型板:御幸町教会
型板:御幸町教会

結霜:網干住宅
結霜:網干住宅

また、お多福ガラスと呼ばれる、小さい板ガラスを組み合わせ、一つの大きな窓に組み上げたものもある。この工夫は、一枚ものの大きなガラスが高価であった事情もあるし、破損時の被害を最小限に抑える、一部を曇ガラスにし外部からの光・視線を調節する、という効果もあり、戦前の旅館や住宅などによく使われた。

世羅:廃旅館
世羅:廃旅館

上下:住宅
上下:住宅

ステンドグラス

教会などでお馴染のステンドグラスだが、住宅や会社、公共施設などの建築にも使われていた。

絵柄も日本古来のものから西洋風のものまで様々で飽きない。

大阪市中央公会堂
大阪市中央公会堂

大阪市中央公会堂
大阪市中央公会堂

旧川上貞奴邸
旧川上貞奴邸

長楽館
長楽館

長瀬産業
長瀬産業

旧山本邸
旧山本邸

生駒ビルディング
生駒ビルディング

市立加古川図書館
市立加古川図書館

大阪証券取引所(エッチングガラスと思われるものも含む)
大阪証券取引所(エッチングガラスと思われるものも含む)

チェリ工房
チェリ工房

個人的趣味としては全面を色付きのステンドグラスで覆うだけでなく、余白を無地のガラスにする感じが好きだ。

鳩山会館
鳩山会館

萬翠荘
萬翠荘

下記は、分類的にはステンドグラスに含めていいか微妙なところ。。

旧帝国ホテル:ライト館
旧帝国ホテル:ライト館

旧ハンター邸
旧ハンター邸

色ガラス

正確にはステンドガラスに使われる細かい色付きのガラスも色ガラスなのだが、こちらでは単色で一枚のガラスを構成するものを色ガラスとしたい。

昔は洋食屋、牛鍋屋などに派手で目立つということで使われていたらしい。しかし現存する建物をみると寺院や学校建築にも使われていて、ある時代流行ったものと思われる。

獅子閣
獅子閣

四天王寺六角堂
四天王寺六角堂

パッと見はフィルムが貼ってあるようだが、色がついたガラスだ。

旧小田小学校本館
旧小田小学校本館

旧小田小学校本館
旧小田小学校本館

舗道窓ガラス

結構好きなガラスが、この舗道窓ガラス。

近代建築を巡っていると結構な確率で地下室が存在していて、その地下室に対して舗道側から明かりをとり入れるためのもののようだ。

太洋ビル
太洋ビル

太洋ビル
太洋ビル

弥栄会館
弥栄会館

大阪市中央公会堂
大阪市中央公会堂

電気が普及した現代ではあまり用いられないと思うが、好きな趣向。

中々地下室側からこのガラス部分を見ることはできないのだが、大阪の生駒ビルヂングでは見ることができて、貴重な体験だった。

生駒ビルヂング
生駒ビルヂング

生駒ビルヂング
生駒ビルヂング

アトリエ、写真館、工場、講堂など広範囲の明かりとりガラス

ガラスといえば透明で光を通すことが特長と思うが、この特長を最大限活かしたのがアトリエや写真館の明かりとりガラスだ。

最初に紹介した板ガラスではあるのだが、広範囲にガラスを大量に使用することに特長があるので別種類とした。

常盤台写真場
常盤台写真場

常盤台写真場
常盤台写真場

佐伯祐三アトリエ記念館
佐伯祐三アトリエ記念館

小熊写真館
小熊写真館

小熊写真館
小熊写真館

写真を撮影するにしても、絵を描くにしても明るい光が必要で、電気の光をそこまで強くできない時代にはアナログ的に光を取り込む必要があったのだろう。

また講堂や工場など暗くなりがちな広い空間を、一度に照らしたい場合にもガラスが利用されている。

大阪府庁舎:正庁の間
大阪府庁舎:正庁の間

大津旧武徳殿
大津旧武徳殿

ノコギリ屋根工場
ノコギリ屋根工場

水屋ガラス棒

建築ガラスとして含めていいのかわからないが、近代建築で時折みかけるので、ある時期流行ったのではと考えるが、水屋で竹の代わりにガラス棒を敷いていることがある。

きんせ旅館
きんせ旅館

ヨドコウ迎賓館
ヨドコウ迎賓館

確かにこれに水を流すとガラスの透明感から涼しげで向いていると思う。現代でも採用したらいいのに。。

オブジェ、照明

照明や内装のオブジェのようなものにもガラスは使用されている。昔ながらの行灯ような和紙を通した光でなくガラスを通した光も良い感じだ。

東京都庭園美術館
東京都庭園美術館

東京都庭園美術館
東京都庭園美術館

東京都庭園美術館
東京都庭園美術館

関連展覧会

→ 「ラリック・エレガンス展」が、そごう美術館で2020年7月8日まで開催中

→ 「建築をみる2020東京モダン生活東京都コレクションにみる1930年代展」が、東京都庭園美術館で2020年9月27日まで開催中

まとめ

現代では見慣れているガラス。
でも、昔もこんなにもバリエーションがあって面白かった。

これから建物をみる際に少し気になるようになったのではないだろうか。

是非とも町中に残るガラスの歪みや色、凸凹をみつけて楽しんでもらいたい。

以上。


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【近代建築の楽しみ方】煉瓦編
【近代建築の楽しみ方】タイル編
【近代建築の楽しみ方】金属天井編

おすすめ書籍

故酒井一光さんの著書。氏の著作はタイルもそうだが近代建築の色々な楽しみ方を教えてくれる。この本は窓に焦点を当てたマニアックな内容。それだけに内容は濃くておすすめ。

超美麗なステンドグラス写真が豊富。既に存在しない建物や改装中の建物もあり貴重。また巻末の藤森照信氏による日本のステンドグラスの歴史についての文章が勉強になる。小川三知とか木内真太郎について詳しく記されている。


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