元々古い建物が好きになったきっかけが広島県大崎下島の御手洗地区を訪れたことだった。何もないような島に突然、栄えた街並みが残っていることに感動したからだが、今回はその大崎下島の隣の島、大崎上島を訪れてみた。
事前に遊郭建築や木造五階建築などが残っている個所があると調査していたからだ。
まずは、本土の竹原港より大崎上島 白水港に向かう。瀬戸内海は大小の島が散らばっていて美しい景色が堪能できる。
車に乗り、早速島の周回道路を東回りで進み、目的地の木江に向かう。
ここには、接待用に作られたという木造五階建築が残っているという。
車を進め木江地区に入るとすぐに目的の建物が目に入ってきた。
おお、木造で五階建ては珍しい。さぞかし最上階は眺めもよかっただろう。
現在は特にお店などしておらず個人所有のもののようだ。
他にも面白い建物はないか周りを歩いてみた。
学校があり、懐かしの二宮金次郎像が。すこしふくよか。
狭い通路を通っていくと、お店があり、大好物のタバコショーケースが。
昔のたばこショーケースはタイル使いが素晴らしく、タイル好きとしては見逃せない。
次は理容院。こちらもタイルがよくつかわれる建物だ。ドアの取っ手が斜めの場合は結構古い店舗ということも、いくつもの古い理容院をみてきてわかったことだ。
海側に進むと古い工場跡があった。こちらからも先ほどの五階建て木造建築がみることができる。
離れてみてもすごい。これが木造とは。
周回道路沿いに天満港辺りに歩いていく。
途中古そうな建物や港湾施設が何件かあった。
天満地区入口に案内板。
進む途中にはいろんなものが。
さらに進むと三階建ての建物が向かい合ってたっていた。
旅館やカフェ、料理屋であったことが古い看板からもみてとれる。
上部に痛みがあるようで、間を歩くのは少し危険を感じた。台風や地震などで倒壊する可能性は高そうで、いずれ壊される運命にあるかもしれない。
運よく裏手の山に神社があり、そちらから全体を眺めてみようと階段をあがった。
おもいがけず、備前焼の狛犬が目に飛び込んできた。
大阪でも備前焼の狛犬をみかけることがあるが、この島にもあったようだ。
また、当方煉瓦も結構好きなのだが、狛犬の基台に煉瓦がつかわれてるではないか。
このタイプははじめてみた。よくみるとモルタルかなにか塗装が剥げているようで、元々は煉瓦は剥き出しでなかったのだろうが、これはこれでおもしろい。他にもあるのだろうか。
神社から麓をみてみる。海も見えてすばらしい。昔は港から男たちが遊びにき賑わっていたのだろう。今では想像しかできない。
やはり、島はおもしろい。
以上。
たまにブログ記事のアクセス分析をしてるのだが、本記事は木江の話しであるのに、なぜか矢津遊郭というキーワードでアクセスされることが多いようだ。
「はて?矢津遊郭?」
と、思って調べてみたのだが、そのような遊郭は存在してなかった。
しかし、さらに調べていると、ある漫画の中で矢津遊郭の名前が出ていることがわかった。
それが「声なきものの唄~瀬戸内の女郎小屋~」(安武わたる 著)。
作品紹介文を引用すると次のようになる。
■紹介文1
明治後期、人身売買の競りにかけられた少女チヌと姉のサヨリ。
チヌは矢津遊郭の「東陽楼」の娼妓となり、サヨリは金持ちに愛人を斡旋する男・瀬島の手に落ちる。
チヌは大地主・公三郎を旦那につけるも、公三郎とは体を重ねていない仲。
そんなある日、公三郎は一緒に駆け落ちし、自分を残して死んでいった華族令嬢・寿子に瓜ふたつの女郎・早みどりに出会い、チヌの旦那であることをやめ、早みどりの旦那になってしまう。深い喪失感に苦しむチヌだったが――!?
■紹介文2
最下層遊郭に売られた少女が見る、この世の地獄!!
明治後期、瀬戸内海の伊之島で生まれ育った活発な少女・チヌ。
母はなく、幼いころから父親と、美しい姉・サヨリとともに暮らしていた。
ある時、父が死に、姉妹は人買いの競りにかけられる。
サヨリは高値で女衒に売られ、チヌは下層遊郭の「須賀屋」へ売られた。
生きていればいつか姉に会えると希望を持つチヌだったが……。
どうも、この「瀬戸内海」「海辺の遊郭」ということで状況が似た木江が連想されているようだが、作者によると実在の遊郭を作品の舞台にしてるわけではないようなので、木江は矢津遊郭とは言えないだろう。
何れにしても遊郭が題材の漫画とは興味深い。
同じように興味持たれてた方、↓で試し読みもできるので、一度読んでみる、といいのではないだろうか。
参考までに、昭和5年に出版された『全国遊廓案内』という、当時全国にあった遊廓を紹介している本の内容がリンク先で読める。大崎上島のある広島県のページはこちら。
全国各地の遊郭時代の建物が旅館などに転業し泊まれる宿になっている。私もこの本をみて泊まってみたくなったさ。
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