私が近代建築を好きになった一つの理由にタイルがある。
ある書籍でタイルの世界を知り、それ以来タイルを町中で探すことが日常になっている。
今回はそんなタイルを【近代建築の楽しみ方】シリーズ第三弾として紹介したい。
他の【近代建築の楽しみ方】シリーズは↓↓↓
→ 【近代建築の楽しみ方】煉瓦編
→ 【近代建築の楽しみ方】ガラス編
→ 【近代建築の楽しみ方】金属天井編
みなさんのタイルのイメージはどんなものだろうか。
私が昔思い浮かべたタイルのイメージは、風呂場の床にあった玉石を模した玉石タイルであった。
ある年代の人はトイレや風呂場にこのタイルが使われている時代を知っているだろう。最近の新しい家ではあまりみかけないのが悲しい。
さらに時代を遡ると、たばこ屋のショーケースや遊郭建築にモザイクタイルが使われていた。
今でも古いたばこ屋さんの店先などでみつけることができる。こちらにはマニアが一定数おり私もその一人なのだが。。
では、近代建築でのタイルの頻出箇所はと言えばどこだろう。
トイレ、風呂場はもちろんなのだが、それは玄関や暖炉廻りだろう。
大阪にある国内最初期の洋館である泉布館には、イギリス製の輸入転写タイルが暖炉に使われている。
ちなみに床はタイルにみえるが、高価もしくは重量の問題から、実は床板にタイル模様が塗りで表現されている偽タイルだ。
次に、帝國ホテルのスダレ煉瓦から爆発的に建物の外装に使われだしたスクラッチタイルがある。はじめは洋館に、後に一般住居にも使われ流行した。今でも古い長屋や町屋などでよくみかける。
あとは、なんといっても銭湯(お風呂屋さん)だろう。
浴室は当然として壁にタイルで絵を描くタイル絵と言われるものがある。東京は富士山などのペンキ絵が知られているが、我が関西では色々な絵がタイルで表現されていることが多い。
タイルは非常に耐久性があるため、あまり経年変化が起こりにくい。つまり日本人好みの古こけていく過程を楽しむことができず、乱暴に言えば数十年経とうがいつ見ても同じ見た目なのだ。
その画一的な見た目をどうにかしようと、スクラッチタイルや美術タイル、布目タイルなどの趣があるタイルが出てきたのではと思う。
それにしても今の建築に使われるタイルは画一的に過ぎないだろか。。
以前の煉瓦編でも触れたが、煉瓦には製造元を表す刻印が刻まれているのだが、実はタイルにもこの刻印が存在する。
ただし煉瓦と違って、これを確認することは極めて困難だ。必ず接着面に刻印があるため通常見えない箇所にある。
何かのトラブルで剥がれるか、接着前のものを手にしないと見ることはできない。もう少し簡単にみれたらなと思う。。
昔タイルのデザインは特に保護されていなかったようである。つまりあるタイルのデザインをコピーして、別会社が自社製品として製造することがよくあったようである。
今となってはどちらが先でどちらが後かわからないし、デザインだけで製造元を特定するのは非常に困難だ。
そこで刻印を確認したいのだが、前段の理由からそれもままならない。
まぁ、それが面白い点でもあるのだが。
タイル、正確にはモザイクタイルの特長は、小さいタイルを組み合わせることで絵や文字を豊かに表現出来ることだ。
これは現在のコンピュータのドット絵と原理はほとんど同じだと考えれる。昔のファミコンなどは解像度が低かったため、少ないドットでいかにそれっぽくみせれるかがドット絵師の腕の見せ所であった。
つまり腕のよいドット絵師であれば、素晴らしいモザイクタイル絵師にもなれると思うのだ。
それにしても、昔はコンピュータなど存在しないため、どのようにデザインをしていたのだろうか?
方眼紙に地道に色塗ってとか想像するが。。それを元に小さいタイルを壁などに貼り付けるのもエラい手間そうだ。。
さて、とりとめもなくタイルについて述べてきたが、実は他にもタイルにはいろいろな種類がある。
次に、私が撮影してきた過去の写真を元に、私なりにタイルを分類したので紹介してみたい。
いわゆるタイル以前に、昔から日本の禅寺の床などに使われてた平瓦。
タイル的につかわれているため一つの分類とした。
元は近代建築の三大巨匠の一人、フランク・ロイド・ライトが旧帝国ホテル用に開発したスダレ煉瓦。
帝国ホテルで使われたことから、大正末から昭和初期まで洋館から町家、住居など日本中で大流行した。
一枚一枚焼きあがりを変え美術品のような美しさをもったタイル。
泰山タイル(池田泰山、泰山製陶所)や山茶窯(小森忍)のものが有名。
→ 関連記事:今も残る泰山タイルを探す日々【美術装飾タイル】
銅板に彫った図案を転写紙に染料でつけ、それをタイル素地に転写し焼いたタイル。
精密な絵を版画のように量産できた。輸入物が多い。
銅板転写の技術を用いて瀬戸などで作られた陶製タイル。
旧家のトイレや浴室、昔の銭湯などでよく使われた。
色をタイル表面に塗ったり釉薬をかけるのではなく、色付きの土を彫りに嵌めて焼くタイル。
マットな質感と、ある程度表面が欠けても同じ色のままなのが特長。
タイル表面に布目状の凹凸をつけたタイル。
凹凸によって表面が画一的にならず趣が出るため、洋館だけでなく近代和館にも使われていた。
凹凸がありキレイな釉薬をかけて焼かれたタイル。
国産品の質が高く後に海外(台湾やインドなど)に輸出されていた。
決まった小さいサイズのタイル。
風呂場や玄関周りでよく使われている。
パターンが幾何学模様でおもしろい。
昔のたばこ屋のショーケースでよく使われている。
ステンレス流し台より前によく使われていた。
滑り止めと排水用の溝が刻まれたタイル。
近代建築の屋上や玄関前などによく使用されている。
玉石を模したタイル。
昭和30年代から流行。一時期は風呂場、トイレなど水回りはこのタイルで埋まっていた。
タイルを模した偽物のタイル。
タイルが高価だったこともあり板に色を塗ったり、金属のトタンを型押して代用していた。
形や色、模様、貼り方が変わっているタイル。
いかかでしたか?
タイルおもしろいでしょう。
この記事を読んでタイル興味持っていただけた方、町中や古い建物でタイル探してみてくださいね!
以上
他の【近代建築の楽しみ方】シリーズは↓↓↓
→ 【近代建築の楽しみ方】煉瓦編
→ 【近代建築の楽しみ方】ガラス編
→ 【近代建築の楽しみ方】金属天井編
私をタイル好きにした本。おじさんだけど。。続編が出そうで出ない。。タイルもいろいろな種類があることを知った。
故酒井一光さんの著書。発売を楽しみに待っていた本。氏の著作はいつも近代建築の新しい楽しみ方を教えてくれる。大阪だけでなく日本全国、また海外まで含めたタイル物件が紹介されている。既に解体している建物や今では見学不可の建物も多いので貴重。それにしても解体した無茶空茶(注:建物名です)の建物に本業タイルあったのか。。見落としてたな。
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