故郷の広島に帰るたびに近隣の県の古い建物を巡っている。その中で岡山は山の中の集落などに突然、古い学校や郵便局などの建築が残っていて非常に楽しめる県だ。
色々な建物を巡って、それらの建物を調べてみると、ある設計者の名前が良く出てくることがわかった。
それが、江川三郎八だ。
江川三郎八は1902(明治36)年に岡山県の建築技師に就任し県内の学校や役所などの公共機関の建築を設計した。岡山には江川が手掛けた建物が比較的残されており今でも訪れてみることができる。
2021-02-10 更新 建物概要を追加しました。
2020-06-22 更新 岡山県真庭市で、以前LIXILギャラリーで展示していた江川三郎八展のパネルを譲り受けて江川三郎八の展覧会をするそうです。お時間ありましたら行ってみてください。「”江川式”擬洋風建築 江川三郎八がつくった岡山・福島の風景」2020年9月29日まで
2020-05-09 更新 江川三郎八 建築マップ[岡山編]も公開しました。
その中で、私が訪れることができた江川三郎八建築を竣工年順に画像付きで紹介したいと思う。
私立閑谷中学校本館として建設。寄棟造,桟瓦葺の木造2階建校舎で,両翼を南前方に張り出したコの字型平面をとり,北側に廊下,その両端に階段を配する。外観は木骨を表に現したスティックスタイルをとる。設計は,遷喬小学校と同じ岡山県工師の江川三郎八。
-文化遺産オンラインより
→関連登録有形文化財:旧閑谷中学校本館
校地南辺に建ち、寄棟造の屋根に半円形屋根窓を設ける。外壁は下見板張で腰を竪板張、小壁は漆喰塗とし、軒を雲形持送で飾る。内部柱は柱頭に円弧形方杖を付ける。天井は二重折上格天井で、灯具釣元は三重に折上げる。和洋の意匠を巧みに融和させた明治期の学舎。
-文化遺産オンラインより
→関連登録有形文化財:金光学園中学高等学校記念講堂
旧遷喬尋常小学校校舎は,明治38年7月に着工,同40年7月に竣工した。設計は,岡山県工師江川三郎八が関わったと伝え,工事監督は中村錠太郎,施工は津山町の高橋岩吉である。平成2年に学校が移転したため,現在は町立文化施設の付属施設として多目的に利用されている。
中央棟の東西に両翼棟が取り付く左右対称型の平面を持ち,独特の意匠になり,比較的規模が大きく保存状況も良好である。我が国において学校建築の設計基準が確立した後にあたる明治後期の代表的学校建築のひとつで,中国地方における小学校建築の歴史を知る上で価値が高い。
旧旭東幼稚園園舎は,岡山市旭東尋常小学校附属幼稚園の園舎として,小学校校舎とともに,明治41年6月に竣工した。設計は,岡山県工師の江川三郎八である。
園舎は,木造平屋建で,八角形平面の遊戯室の四方に保育室などが取り付く,いわゆる梅鉢型の平面とする。遊戯室は,中心に八角形断面の柱を建て,周囲にガラス入りの建具を巡らせるなど,採光に配慮したつくりとする。屋根はマンサード風の宝形屋根とし,保育室の小屋組は,洋小屋を組む。
旧旭東幼稚園園舎は,梅鉢型平面を最初に採用した幼稚園園舎建築であり,梅鉢型園舎の原型となったことで,幼稚園史上,高い学術的価値が認められる。-文化遺産オンラインより
日本最古の木造校舎と言われる高梁市立旧吹屋小学校。明治6年(1873)に拡智小学校として開校され、後に吹屋小学校,吹屋町立尋常高等小学校となりました。東校舎・西校舎等が明治33年(1900)、本館が明治42年(1909)の建築。
本館2階講堂内部の折上天井及び正面演壇や、天井を支えるトラス構造等は当時の建築手法を伝えています。2012年3月末で廃校となったが校舎は保存されることになりました。-岡山観光WEB
未訪問
敷地東面が総社宮参道に接する角地に建つ。桁行7間,梁行4間半で,寄棟造,桟瓦葺の木造2階建で,東南隅に宝形造,八角形状の塔を配す。基礎は煉瓦積,外装下見板張で,柱形や襷形を現し,開口部廻りに装飾を施す。近代の警察署の建築として貴重。
-文化遺産オンラインより
→関連登録有形文化財:総社市まちかど郷土館(旧総社警察署)
木造二階建の郡役所庁舎。正面中央玄関上部を塔屋とし、その背後から西寄りのみ二階建として二階に議場を配す。塔屋以外は桟瓦葺で、外壁は下見板張とするが、一・二階腰部を竪羽目板張としてアクセントをつける。地方における行政庁舎の近代化の様相を示す。
-文化遺産オンラインより
未訪問
未訪問
木造平屋建ての洋風建築の建物で、中央部分と、そこから東西に延びる両翼部分から成る建物です。中央部分には正面に玄関、その奥に八角形の展示室(旧遊戯室)があります。両翼部分は北側に開放廊下が通り、南面に収蔵室・作業室(いずれも旧保育室)が配置されています。
-倉敷市サイト
未訪問
→関連登録有形文化財:倉敷市歴史民俗資料館(旧倉敷幼稚園園舎)
明治記念館は木造平屋寄棟造、下見板貼りの上部を漆喰壁で仕上げ、南面入口に切妻屋根の庇を張り出し、東西両面には上げ下げ式の縦長窓を等間隔に並べます。窓の上下には凝った装飾が添えられています。小規模な建物ですが、一連の江川作品に共通する意匠が随所に見られます。
- 岡山県立矢掛高等学校
倉敷川畔重要伝統的建造物群保存地区の中心に位置する。倉敷町役場として建てられている。木造2階建,下見板貼りの西洋館で,大正期の軽快なスティックワークが見られる。隅部角塔のドームは特異な形態で白壁の町並みの中にあって異彩を放っている。
-文化遺産オンラインより
未訪問
2020年5月25日 江川三郎八の設計ではなく部下が設計したことが判明したようです。
→ 美観地区「倉敷館」の設計者判明 県建築技師の小林篤二 史料に署名:山陽新聞
金光教本部前の広場に北面する。木造二階建、寄棟造、スレート葺で、建築面積一二八平方メートルである。切石積基礎に外壁下見板張とし、中央に入口を配する左右対称の外観が特徴。軒線中央部を僅かに切り上げ、ベディメント状に見せる。洋風意匠の事務所建築。
-文化遺産オンラインより
→関連登録有形文化財:金光教徒社東棟
→関連登録有形文化財:金光教徒社西棟
→関連登録有形文化財:金光教徒社中央棟
→関連登録有形文化財:永井家住宅主屋
東を正面として建つ。木造2階建で,東半が洋館,西半が和風住宅になる。洋館は正面中央の玄関を境に左右対称とし,スティックスタイル風の外観で,縦長窓の上を櫛形ペディメントを飾り,妻飾はハンマービームトラスを模す。調和のとれた意匠をもつ洋風建築。
-文化遺産オンラインより
→関連登録有形文化財:定金家住宅主屋
未訪問
明治30年設立の土居銀行の社屋として建てられた。ルネッサンス様式を基本としながら,多様なモチーフを用いる。木造であるが西洋古典様式風のオーダーが付く石造風の外観である。現在は資料館として用いられ,その特異な外観からひときわ目を引く存在である。
-文化遺産オンラインより
→関連登録有形文化財:作州民芸館(旧土居銀行本店)
未訪問
客殿前方南側に西面して建つ。木造二階建、寄棟造で西南隅に塔屋を設け、正面に玄関ポーチを付す。外壁は人造石洗出し仕上、半円窓やメダイヨンで要所を飾る。一階に応接間等各室、二階に大広間を設ける。客殿と相対し、格調高い和洋館併設の表構えをつくる。
-文化遺産オンラインより
まだ訪れることができてない建物や、実は江川三郎八建築だったのか、というものがまだ残っているかもしれない。これからも最新情報をチェックしておこうと思う。
以上。
私の写真よりもきれいな写真が載っていておすすめ。竣工当時の写真や福島にある建物のものもあり読み応えがある。LIXILギャラリーの展示をみると欲しくなるはず。
2021年9月25日
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